埼玉県内・共済組合会員限定・非営利組織・営業なし等により、坪単価30万円代という圧倒的な坪単価の安さを誇る県民共済住宅ですが、実際住宅の性能ってどんなものか気になりますよね。
ということで、今回は県民共済住宅の住宅性能について検証してみました。
なお、県民共済住宅の使用については、2023年5月適用の標準仕様に基づき記載しています。
今回は『せやま基準』に当てはめてみました。
せやま基準とは…?
⇒家づくりメディア『家づくりに、“ちょうどいい塩梅”を。|BE ENOUGH(ビーイナフ) (be-enough.jp)』で紹介されている「ちょうどいい塩梅」の家づくりの基準のこと。
今回は同サイトで公開されている『せやま基準一覧表』のうち、性能基準について当てはめていきます。
なお、同基準において推奨されているのは「〇ちょうどいい塩梅」です。
運営のせやま氏はYOUTUBEでも「家づくり大学」と称して施主目線での家づくりについて発信を行っておられます。県民施主にとっても非常に参考になるため、視聴をおススメします。
なお、分からない部分は確認でき次第追記していきますのでご容赦ください。
留意事項として、OP対応などについては私の担当の設計士さんに確認した事項も含まれるため、県民共済住宅施主全てが必ずそうだとは限りませんのでご注意ください。(ホントはそれもおかしな話なんですが…)
<基本性能>
【窓】
①サッシ…〇
標準でオール樹脂サッシ(※)です。ローコスト系の住宅ではアルミ樹脂複合も散見されるため、標準オール樹脂サッシはかなり良い方だと思います。
(※)窓はYKKAPとLIXILが選べますが、LIXILはアルミ樹脂複合のため注意が必要です。準防火地域ではLIXILしか選べないようなので、そこも注意が必要です。
②ガラス…〇(OPで◎)
標準でペアガラス、オプションでトリプルガラスが選択可能です。(トリプルガラスへの変更は、掃き出し窓で約10万円程度)
③中空層…〇
標準でアルゴンガスです。クリプトンガスへの変更はできません。
④スペーサー…△(OPで〇)【5/8追記】
標準でアルミスペーサーです。樹脂スペーサーへの変更はできません。OPでトリプルガラスへ変更(YKK:APW430、LIXIL:TW)すると、スペーサーも樹脂スペーサーになります。なお、ペアガラスのまま樹脂スペーサーへの変更が可能かどうかは不明です。(5/8追記)
スペーサーはサッシほどの重要度は無いため、アルミでも問題ないかなと思います。
【断熱】
①UA値…〇(OPで◎)
埼玉県はほぼ6地域なので0.6以下が基準となりますが、標準仕様で満たしています。(県民共済住宅のHPに記載あり。)2022年の省エネ法の改正により長期優良住宅の基準がUA値0.6以下(6地域)になったため、多くのメーカーでも標準0.6以下は達成するのかなと思います。
OPの高断熱仕様にすると大体0.46あたりになってくると思われます。流石に0.23には届きませんが、十分な断熱性能であると思われます。
②屋根裏の断熱…△
天井断熱になります。勾配天井など構造上天井断熱にならない場合のみ屋根断熱になります。
③天井の断熱性能・厚み…△と〇の間(OPで〇)
標準仕様だと1.5倍程度、OPで高断熱仕様にすると約2倍になります。
④床下の断熱…△
床断熱になります。せやま基準では基礎断熱を推奨していますが、断熱性能それ自体というよりは、気密の確保による理由が大きいと思われます。
⑤玄関ドアの断熱…〇(OPで◎)
標準でD2・K2仕様になります。ハイグレード対応はできません。ハイグレードの対応は可能とのことです。ただし、価格は跳ね上がる(具体額は未確認だが、D2・K2のデザイン変更ですら+20万円なので、ざっと30~50万円ではと推察)とのことでした。(0516担当設計士さんに確認し追記)
【気密】
C値…×(施主努力により△と〇の間に近づけるかどうか)
県民共済住宅では、気密測定を行っておりません。また、床断熱かつ天井断熱、断熱材も気密が取りづらい袋入りグラスウール、極めつけは浴室ですら基礎断熱になっていないことからC値は全く期待できません。たぶん普通に施行して測定すると余裕で2.0は超えるのではないかと予想しています。
これは県民共済住宅において、明確に物足りない点だと感じています。
浴室を2階に持ってくる、建物構造を気密が取りやすいものにするといった配慮や頻繁に現場に顔を出し、気密テープを張らせてもらうなどの施主努力によりC値1.0以下を達成している県民ブロガー様もおりましたので(それでも0.7には届かない)、〇を達成するのはほぼ不可能くらいに考えておいた方が良いでしょう。
【換気システム】【0728修正】
システム種類/ダクト計画(メンテナンス)…×(ダクトレス第3種換気)(OPで△)
2022年まではダクト排気型の第3種換気システムが標準でしたが、2023年からはダクトレス第3種換気が標準に変わっています。
気密とセットで考えるべき換気ですが、気密にこだわらないメーカーである以上、換気にもこだわりがないのかもしれません。
OPでダクト給気型の第1種換気(全熱交換型)にすることもできますがそれでもせやま基準上は△に留まります。
<メンテナンス>
【外壁】※②以降は標準のサイディングについてのみ記載(6/24追記)
①外壁材…〇(オプションで◎)
県民共済住宅の標準は「窯業系サイディング」です。
(2022年まではALC外壁が標準(選べる標準仕様)でありましたが、2023年に廃止されています)
オプションでタイルにすることも可能です。(ざっくり150~200万円の高額OP)
金属系サイディングにすることはできません。(6/24追記)
②セルフクリーニング機能…〇
標準のサイディングは、ニチハのモエンエクセラード16Fu-ge(フュージェ)とケイミューの光セラ18、旭トステムのガーディナルsmart(15PZ)から選べます。(6/24追記)
いずれもセルフクリーニング機能はついています。
③外壁材の保証…〇(△)(6/24追記)
各メーカーの製品本体の保証年数は以下のとおりです。(いずれも最新カタログから判断して記載)
ニチハ…15年(〇)
ケイミュー…10年(△)
旭トステム…15年(〇)
色40年品質と一番大きく出ているケイミューが15年保証でないのは意外です。
④シーリングの保証…×(6/24追記)
シーリングは、それぞれのメーカーの純正品であれば保証はついてきますが、残念ながら県民共済住宅のシーリングはメーカーの純正品ではないそうです。
耐久性は純正品と同等のものという説明を受けましたが…保証は無いようです(;^ω^)
こういう目に見えないところも頑張っているのが県民共済住宅というイメージでしたが…残念です。。
なお、ニチハと旭トステムはシーリングレス仕様ではありますが、窓サッシの回りなど、一部はシーリングが必要になる箇所があるため、完全なシーリングレスではないことに注意です。
【屋根】
①屋根材…◎〇
県民共済住宅の標準は瓦とガルバリウム鋼板(横暖ルーフS)で選択が可能です。
耐久性という面では瓦一択かなと思います。ガルバリウム鋼板は主に3階建てで高さを抑えたいときに使用するようです。
②屋根材の保証…〇【5/13追記】
県民共済の新都心本店の展示で確認したところ、メーカーの15年保証が付いていました。
③屋根防水シート…〇
標準で改質アスファルトルーフィングです。
【バルコニー】
バルコニー防水…△
標準はシート防水です。オプションでFRP防水にすることもできますが、それでもせやま基準上は△に留まります。OPでもFRP防水にできないと設計士さんに言われました。今時シート防水なんてうちくらいですよと自嘲していました。。(じゃぁアップデートしてよ…(;^ω^))(0516追記)
【太陽光発電】
①パネル…〇(長州産業のみ確認)(0516太字部分を追記)
県民共済住宅で取り扱っている太陽光のメーカーはパナソニックと長州産業です。
長州産業については、高温高湿試験3000時間をクリアしている旨がカタログに記載されていました。流石にマキシオンには及びませんが、十分な耐久性は持っています。
パナソニックはDNV GL(ノルウェーの第3者機関)のトップパフォーマー認定企業であることや、長州産業もせやま氏がライブ配信で基準クリアしているようなことを言っていたので恐らく大丈夫だと思いますが、カタログには記載がなく、設計士さん経由問い合わせてもなかなか回答が来ないため不明です。
設計士さん曰く、性能価格ともに長州産業の方が優れているため付けるなら長州産業一択とのことです。
②パワーコンディショナー…〇(長州産業のみ確認)(0516追記)
長州産業は標準でマルチMPPTでした。パナソニックもカタログを見る限りはマルチMPPTっぽいですが標準かどうかは不明です。
<地震・シロアリ・災害対策>
【地盤・基礎】
①地盤保証…〇(OPで◎)(6/24追記)
標準で10年の沈下保証が付いてくるようです。
OPで、20年にすることもできます。(約4万円と破格(!?)の安さ)
②基礎種類…〇
標準でベタ基礎です。
③基礎高…◎
標準で45cmです。
【シロアリ対策】
シロアリ対策…×(通気パッキン工法)
県民共済住宅では地面に敷く防湿シートは防蟻用ではありません。柱への処置については檜の柱に防蟻剤の吹付けを行います。
なお、このチェック項目は基礎断熱を前提にしていると思われます。
県民共済住宅は床断熱であり、床下は通気パッキンにより通気されているため、シロアリが上がってこれないようになっています。
【設計強度】
①耐震等級…◎
県民共済住宅は全棟耐震等級3取得です。耐震等級2では建ててくれません。
②構造の計算方法…〇(オプションで◎)
等級3は壁量計算です。オプション(約10万円)で許容応力度計算による耐震等級3を取得できます。
③壁直下率…〇(プラン次第)
プラン次第だと思いますが、設計士さんに聞けば教えてくれます。
④偏心率…〇(プラン次第)
こちらもプラン次第ですが、設計士さんに聞けば教えてくれると思います。
【災害対策】
①火災対策…△
県民共済住宅では、OPでも省令準耐火構造にはできません。過去の施主ブログを拝見する限りでは、出来ている方もいたようですが、少なくとも2020年以降は出来ないことを確認しています。
②水災対策(基礎高さ)…〇
基礎の高さは45cmです。
③水災対策(給湯器配管処理)…?
確認していないので不明ですが、シーリング処理をしているとは思えません。
④水災対策(換気システム排気口)…ー
澄家は採用できないので項目非該当
⑤風災・空き巣対策…◎
1階2階問わずすべての引き違い窓にシャッターが標準でついてきます。
まとめ
以上、県民共済住宅の性能面を見てきました。
流石に全てクリア!!とはいきませんでしたが、ローコスト住宅にしてはかなり良い部類に入るのではないかなと思います。
個人的には、気密と換気が大きな懸念点かなと思います。せめて浴室だけでも基礎断熱にしてほしいです。切実に。
なお、県民共済住宅とせやま印工務店の基準価格との差は、標準仕様の違いを差し引いても(せやま基準で標準なものを可能な限り県民共済住宅でOPで付けたとしても)500万円程はあると思われます。
もし、せやま印工務店か県民共済住宅で悩んでいる方がいれば(価格帯が違うからいないかな?(;^ω^))この価格差と性能の過不足を比較衡量して判断していくのかなぁと思います。
以上、終わりっ!!